20分

20分で書き上げた記事をリライトなしでアップしていくブログです

釧路はいい街になのにね

gendai.ismedia.jp

という記事を読んだ。

北海道の釧路という人口10万人ほどの街で高校生活を送り、東大に進んだ筆者の地方と都会では教育と文化での格差を感じるという内容だ。
テーマそのものはまあそうだなと思う一方で、筆者の高校時代の具体的なエピソードには?と思うことも多くて、なんとなくモヤモヤした気分をひきずっていた。

と、こんどはこんなツイートのまとめを見つけた。

togetter.com

元記事の筆者と同じ時期に釧路で教師をしていた人のツイート。
また筆者よりも十年ほど前に釧路で高校生活を送っていた人のブログも紹介されていた。

tonishi0610.blogspot.jp

読んでみてモヤモヤした気分が取り払われた。

モヤモヤの原因は元記事で語られている釧路の街がぼくが知っている釧路のイメージと合わなかったからだ。

教育については分からない。
中学や高校の演劇鑑賞授業の作品で全国の学校を回っていたことがあった。
その関係でいろんな先生と話をしたり、先生が生徒にどう接するかをよくみる機会があった。
その頃に思ったのは、学校や地域の教育方針は土地によってかなり違うということ。
転校を繰り返していた人以外は、そんなにいろんな学校の内情を見る機会は少ない。
だから、多くの人は気がついていないかもしれないけど、学校でどこもわりと変わっている。

なので、ブログで語られている地域の教育環境の話とかも、ちょっと眉唾っぽい感じはするものの、まあそんなこともあるのかなと思っていた。
そのあたりのぼくの疑問に、ツイートは答えてくれていた。

まあここで記事内容の真贋を問うつもりはない。
地域で教育格差は実際にあると思うし。

ただ文化については少し思うところがある。
釧路って地方都市の中で文化的にそこまでひどくはない気がするから。

「演劇鑑賞会」という組織がある。
文化に触れる機会が少ない地方の住人たちが、自分たちでプロモーターとして東京とかから劇団を呼んでしまおうというものだ。

かなり昔からあるプロジェクトで、元々は左翼っぽい流れで始まっている。
いまではそういう政治的スタンスを押し出しているところは少ない。

全国の地方都市に「演劇鑑賞会」があるところは多く、釧路にもある。
そしてぼくも演劇鑑賞会に呼ばれた東京の劇団のスタッフとして釧路に訪れたことがある。

ぼくが釧路に行ったのは2005年頃だったと思う。
その頃は演劇鑑賞会は普通に活動していて、年に6本の作品を上演していた。
すべて、東京や大阪から呼んだプロの劇団の作品だ。

ぼくは街歩きが好きなので、空き時間に釧路の街を少し歩いたりもした。
確かに、それほど活気がある街ではなかった。
目抜き通りにもシャッターを降ろした店は多かった。

とはいえ、全くさびれているわけではなかった。
そこそこ大規模な書店もあったような気がする。
古本と雑貨をメインにした小さいけれどとても雰囲気のいいお店があったことはハッキリと覚えている。
気になったのでググってみたが、釧路市内にはライブハウスやライブバーみたいな音楽が聴けるお店も何軒かあるようだ。

ぼく自身の体験からだと、釧路という街はそこまで文化程度の低い街だとは感じていなかった。
なのに元記事を書いた人は釧路では文化に触れる機会はまるでなかったというような書き方をしていた。

かく言うぼくは兵庫県尼崎市から大学に入って東京に出てきた。
仕事を始めてから関西に来る機会はよくあり、そのたびに同行している仕事関係の仲間から
「どこかおいしい店教えて?」と言われたりする。
そんなときには
「王将しか知らないです」と答える。

高校生の頃の溜まり場といえば餃子の王将だった。
うちの近所にはファミレスみたいな大規模な王将があった。
安くて、腹いっぱい食べられて、お酒もゴニョゴニョ……、とまあ高校生にとってはとても使い勝手のよい場所だったのだ。

そんなごく普通の高校生活しか送っていないぼくに、いろんな地方を回って口のおごったおっさんを満足させられる店なんて知っているわけがない。
家族でよく外食する家ならばいくつかは思いつくかもしれないけど、うちはそれほどいい店で食事をするわけでもなかったし。

思ったのは、そもそも高校生ってどのくらい地元のことをしってるんだろうってこと。
いまのぼくが地元の尼崎で暮らしていたら、きっとおいしい店の何件かは即答できると思う。
その頃は全く知らなかったけれど、尼崎には全国に先駆けて公共が面倒をみていたレベルの高い市民劇団も存在していた(もちろんいまも存続している)

地域の格差も確かにあるんだろうけど、少なくとも文化についてはそれぞれの家庭や個人の資質による格差もかなり大きいと思う。

東京で暮らしていても、映画や演劇を見ない人なんていくらでもいるし、音楽ライブに出かけたことのない人もいくらでもいる。
演劇の世界で働いていると、地方出身の人がかなり多い。
演劇なんてものに触れる機会がほとんどない街から来た人が、俳優を目指している。

出身地については詳しいと外の人は思うだろうけど、高校で街を出た人が持っている街の情報なんてごくごく限られているのが当たり前なんじゃないかなあ。
だからその人の語る「地元」がファンタジーにあふれているのも仕方のない話だよね。

(39分47秒 2160字)

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