20分

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ファンの気持ちが分からない

「プライベートではどのくらいお芝居を見ますか?ろ
「……年に2,3本くらいですかねえ……」

目の前にいる人は筋金入りのミュージカルファン。
話によると、毎月の少なくとも一本はミュージカルを観劇。
好きが高じて、俳優や作曲家を招いてのイベント企画を始めたりもしている。

いっぽうこちらはプロの舞台スタッフなんですが、仕事抜きで、キチンとお金を払ってお芝居を見ることはほとんどない。
彼女のような人がいるおかげでぼくはギャラをいただいて、舞台の仕事で生活していけるわけで、足を向けて寝られない。

スタッフにもいろいろなタイプがいて。
見ることが好きだから仕事にしたくて、でも舞台に立つ人にはなれないと思い裏に回ったという人は多い。
こういう人はプライベートでもよく舞台を見に行ったりしている。
多分、好きなことの近くで仕事をしていることが楽しくてしょうがない人。

その一方で完全にお仕事として割り切っている感じの人もいる。
スキルはあるし仕事っぷりも堅実。
でも空き時間のスタッフ同士のムダ話の中でもそれほど情熱や愛情を感じない。
関わっている作品や俳優さんへの思いを漏らすこともなく淡々と仕事をこなすタイプ。
そういう人はプライベートも謎なのでもしかすると舞台を見に行ったりしてるのかもしれないけどちょっとよく分からない。

特定の劇団や俳優、アーティストのファンだったタイプの人もいる。
好きな人への興味が舞台を創ることへの興味と広がってスタッフになった。
こういう人は上のふたつのタイプをミックスしたような感じ。
自分が好きなジャンルへの愛は惜しみないけれど、それ以外には職業的な関わりにとどまる。
もちろん、仕事はキチンとやる。
ある意味ではとてもわかりやすいタイプかもしれない。

ではぼくはと言うと、見るよりも創ることが好きなタイプ。
出演者と制作と技術スタッフという様々な人間が寄り集まったひとつの作品を創っていく、その過程が好き。
いまはお芝居をメインでやっているけど他のジャンルでも構わない。
ライブでもイベントでも、舞台の上に何かを創り上げることそのものが楽しくてやっている。

ぼくに限って言うともともとファンだった体験はあまりない。
高校時代から文化祭ではお芝居の演出をやったり、ライブの裏方をやったりしていた。
そういう意味では今とやっていることはあまり変わらない。

大学に入ったときにも、舞台の世界に進む気なんて全くなかったのに、たまたま裏方だけをやるという謎のサークルを見つけたのが運の尽き。
そのまま「創る側」の面白さに目覚めてしまい、いつの間にか裏方を仕事にしてしまい、そしていまに至る……

そう、だから「ファン」の心理が実のところ全く分からない。
そのことにちょっと引け目を感じたりもしていて、だから目の前にいるど真ん中のファンの方がちょっと眩しく見えたりもする。

でもこの仕事をしていてもファンとしての役得ってあんまりない気もするけどね。
別に俳優さんやアーティストさんとプライベートの関係性がもてるわけじゃないし。

打ち上げや本番期間中に役者、スタッフ交えての飲み会が企画されることもありますが、出演者は出演者、スタッフはスタッフと、同じお店にいてもテーブルは別れていることがほとんどだし。
こちらから出演者テーブルに乗り込むのはやはりはばかられるし。
スタッフテーブルに来てくれる出演者さんもほとんどいないし。
そもそも、話題もあまりないのでお互いに気を使うしね。

そして公演期間が終わると全くの没交渉です。
そもそも連絡先も交換しないし。
タレントさんとプライベートな連絡先を交換したことも、食事に行ったりしたこともほとんどないし。

そして自分自身でも有名人と知り合いになることにほとんど魅力を感じないしね。
やはり俳優さんは舞台の上で、アーティストさんはライブで、見ているのが一番ステキだと思うのです。
そしてそんなキラキラした人たちが、どうすればもっとステキに見えるのかを考え続けてる方が、ぼく自身もずっと楽しかったりするのです。

まっ、根っからのスタッフ気質なんでしょうかね。
舞台に立つ人の感覚も少し学ぼうと、おすすめされたテキストも読んでみます。

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(24分05秒 1698字)

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